人手不足で新卒の求人がタイトになっている中、「中途採用」に積極的な企業が増えています。そこで今回は、経済産業省が作成した「中途採用・経験者採用に積極的な企業実例集」から有名企業の中途採用への取り組みをご紹介します（中途採用比率は特記以外2018年度の数値）。
●江崎グリコ
中途採用比率は50％で、年代、性別、職種、国籍を問わない積極採用の方針です。とくに注目されるのが「カムバック制度」で、退職した社員の出戻りを認めています。さらに会社に在籍しながら社外の仕事ができる「複業」（副業ではない）の制度もあるなど、門戸を広げた採用戦略が見てとれます。
●鴻池運輸
中途採用比率は約43％。年功序列の処遇を撤廃し、中途採用でもハンデのない人事制度改革を進めています。中途採用者が半数近くを占めているのは、業種の特徴として新卒では難しい有資格者を優先採用しているためです。
●塩野義製薬
中途採用比率は約14％と他社よりは低めですが、これは医師、弁護士、国際税務、データ関連など専門性の高い人材に特化して中途採用を実施しているのが理由です。中途採用社員が働きやすい職場環境を整えた結果、中途採用社員の過去3年間の離職率はわずか3.9％と、極めて優秀な人事戦略を実現しています。
●商船三井
中途採用比率は約34％。同社では中途採用を「キャリア採用」に呼称統一するなど、中途というマイナスイメージを払拭しているのが特徴です。部門を専門型と一般型に分け、多様なキャリア採用のルートを確保しています。
●全日空
新卒採用のイメージが強い航空業界ですが、意外にも中途採用に積極的で、2018年度採用計画では中途採用が80名と、新卒117名と比較した採用比率は約41％と高めです。入社時に社長と直接対話するタウンミーティングを実施して、社員のやる気を向上させています。
●デンソー
中途採用比率は約33％で、3人に1人が中途採用。豊富な求人チャネルを持っているのが特徴で、人材紹介会社経由を中心に、自社ウェブサイトや、社員の紹介、ダイレクトリクルーティングなどを利用して、潜在的な転職者層の掘り起こしを行っています。
●ファナック
中途採用比率は約31％。スキル保有者は異業種からでも積極的に採用しています。女性エンジニアの採用も積極的に行ない、2019年には社内保育所を設けるなど、女性が働きやすい職場環境を整えています。
●ローソン
2017年度の数値ながら、中途採用比率が約55％とこの中では唯一の50％超えを果たしています。とくに中途社員が多い職種はスーパーバイザーと呼ばれる店舗指導員で、毎年大規模な人数を採用しています。店舗数が多いコンビニ業界ならではの人事戦略といってよいでしょう。
