2018年11月27日、外国人労働者受け入れ拡大を促進するための、出入国管理・難民認定法改正案が衆院本会議で可決されました。
労働者不足に悩む業界には歓迎すべき法改正ですが、実際の新制度運用にはさまざまな課題もあります。
新設される「特定技能1号、2号」とは何か、新制度の仕組みと条件について解説します。
「特定技能」1号と2号の違いとは?
今回新設される「特定技能」には1号と2号の2種類があります。1号資格取得者は熟練した技術を要しない、比較的単純な労働に就くことが想定されます。在留期間は5年と定められています。
〈特定技能1号労働者を受け入れ予定の14業種〉
建設、農業、漁業、飲食料品製造、外食、素形材産業、産業機械製造、電子・電気機器関連産業、造船、自動車整備業、航空、介護、ビルクリーニング、宿泊。
一方の2号資格取得者は熟練した技能を必要とするため、就業するためには分野ごとの技能試験に合格することが採用条件となります。ハードルは高いですが、在留期間がないため、資格を取得すれば事実上の永住や家族の帯同も認められるなど、労働者側には大きなメリットがあります。
非正規従業員中心の業界にはメリット大
次に、受け入れる外国人は「技能実習生」とそれ以外に分けられます。「技能実習生」は、実習生として働きながら技術を習得し、3年の経験があれば無試験で「特定技能労働者1号」に移行できます。
これに対し、技能実習生以外は日常会話程度の日本語試験と技能試験に合格すれば「特定技能労働者1号」の資格を取得できます。
いずれのコースを辿っても、さらに難しい専門分野の技能試験に合格すれば「特定技能労働者2号」に昇格することができます。
したがって、パート・アルバイトや期間従業員など、非正規従業員が中心の業界であれば、外国人労働者を受け入れ、実習期間中に能力を見極めた上で、優秀な人材だった場合に正社員にステップアップするという採用方法が可能になります。初めから正社員として受け入れるリスクを抱えるよりは、効率的な人事戦略を取ることができるため、企業側にとってもプラス効果が見込める法改正といえます。
今後の課題と日本の将来像
さて、実際の制度実施までには課題もあります。外国人労働者の受け入れ規模や制度の詳細な基準はまだ明確になっていないため、法案成立後に法務省令などで定めることになります。まだまだ未知数の要素が多いのが現状です。
それでも外国人労働者の絶対数が増えることは、労働者不足に悩む業界にはプラスになることは間違いありません。
人口減少社会に入った日本の将来像を考えた場合、外国人観光客の一段の誘致や、外国人労働者の受け入れ増加は避けて通れない課題です。
否が応でも国際化が進むことになる日本にとっては、外国人労働者を有効に活用できるか否かが、企業業績の浮沈を左右することになりそうです。