アトム電器チェーンという組織を御存知でしょうか。アトム電器チェーンとは、全国に1000店舗を展開する、量販店傘下でも、家電メーカー系列でもない、「町の電器屋のチェーン」です。このグループは「弱者の戦い方」により着実に増益を果たして続けています。
昔ながらの「町の電気屋さん」の多くは、豊富な品ぞろえと低価格で市場を圧倒する「大型量販店」に押され、もはや息も絶え絶えとなっています。その中で「アトム電器チェーン」は成長を続けています。その理由は、アトム電器チェーンには戦略があるからです。アトム電器チェーンの社長は、「(大型量販店に負ける)理由はズバリ戦略が間違っているからです。つまり大型量販店は正しい戦略を取っているのに対し、地域電器店は戦略とは何かも知らないし、考えたこともないのが普通です。」と断言しています。
雑魚(ざこ)は磯辺、鯨は沖で
そのアトム電器チェーンの戦略を一言で表現すれば「雑魚(ざこ)は磯辺、鯨は沖で」戦略です。鯨(量販店)は沖では王者ですが磯辺に来ると腹がつかえて動けなくなり死んでしまうことになるので磯辺にくることはありません。したがって、雑魚(電気屋)は浅い磯辺で遊んでいる限り鯨に襲われる心配も少なく安心なのです。つまり、自然界の法則のように、自分の生存領域(ドメイン)を自覚して、そのドメインの中で生きていくという戦略です。「小さいところは小さいやり方が良く、大きいところは大きいやり方が良い」ということです。
大と小の法則
例えば、量販店のような大きい店は大量展示、安売り、大量の折込チラシ等のような無差別対応に重点を置くと大成功します。しかし、「町の電気屋さん」が大量展示、安売り、大量の折込チラシをしようとしても、中途半端に終わって、量販店に勝てるわけがなく、傷を広げるだけです。小さい地域店は、こだわり、個別対応、訪問、手配りDM等に表される、少量であるが人的なつながりに重点を置いた戦術に徹底するべきなのです。
販売商品にも大と小の法則があります。携帯電話やパソコンは、売り切り型の薄利多売型商品です。量販店向きの商品であり、町の電気屋さん向きではありません。故に、(驚くべきことに)アトム電器チェーンでは携帯電話やパソコンを販売していません。一方、エアコンは設置工事を必要とする商品なので、どちらかといえば「町の電気屋さん」向きなのです。そこで、アトム電器ではエアコンの販売に力を入れており、(驚くべきことに)「量販店に1円でも負けたら、 差額の2倍返し」というキャンペーンを行っております。また、オール電化(IHクッキングヒーター・エコキュート・太陽光発電)は特に「町の電気屋さん」向きの商材であり、アトム電器チェーンが強みを発揮して収益の柱となっています。量販店もこの分野に攻めこもうとはしていますが、磯辺にきた鯨のように苦戦が予想されます。
給与と貢献利益を公開
アトム電器チェーンの本部社員については、個々の社員の給与がオープンにされています。給与だけでなく、個々の社員の貢献利益もオープンにされているそうです。かつては、社員個々の給与が明るみになると、社員間の揉める火種を作ることになるし、社員のやる気を削ぐことになると考えていたそうですが、180度の方針転換を行い、給与を公開することにしたそうです。
因みに我が社では、貢献利益の半分が社員の報酬となる制度となっており、個人の貢献利益を公開しております。(細かいところでは色々な工夫・秘訣があります。)したがって、個人の給与を直接的に公開しているわけではありませんが、実質的には公開しているのも同然です。そして、給与に不透明感も不公平感もないので、社員間の揉める火種を作るどころか、モチベーションアップにつながっています。