1 MUSTか
経営に必要なのは選択と集中です。
絞り込みに必要な思考法の一つは、「やらなければならないこと(MUST)」と「やったほうがいいこと(BETTER)」を区別することです。
残念ながら、この思考法を実施した場合に、ほとんどを「やらなければならないこと(MUST)」に分類してしまうことが良くあります。
その場合に利用する思考法が、2分法です。この方法では、優先順位の高いものを全体の半分に絞り込みます。必要であれば、その半分の中から、より優先順位の高いものを半分だけ選びます。
2 3つの視点
物事を成功させるためには、3つの条件を揃えることが大切です。その3つの条件とは、「やるべき」「できる」「やりたい」です。このうち一つでも欠けると実現性は相当に低くなります。一つだけの条件しか満たさないとなると実現はほぼ不可能です。
よくある失敗例は、「やるべき」という「べき論」だけで実施を決めてしまうことです。「やりたい」と思わなければ長続きはしませんし、「できる」ことでなければ、そもそも実現不可能です。
物事を決める際には必ず「やるべきか」「できるか」「やりたいか」について常に自問自答してください。
3 確率はどうか
経営に必要なのは「確率」を冷静に判断することです。
日本人は確率についてキチンと考える癖が付いていない人がほとんどです。確率というと、大きく分けると2つのパターンでしか考えません。①白か黒か、②一か八(罰)か、です。
まず、「白か黒か」ですが、これは起きるか起こらないかという2分法の思考法です。確かに結果的には起きるか、起こらないかのどちらかなのですが、経営的には、20%起きるとか、30%起きるとかいう思考法が大切なのです。
しかし、日本人は「グレー」が嫌いで、中途半端が嫌いなせいか、確率的に物事を考えません。そのため、5%程度の確率では0%と見做しがちです。その結果、確率は少ないが成功すると大きな利益が見込めるプロジェクトを「そんなことは起こらない」と切り捨ててしまいがちなのです。日本にベンチャー企業が育たない原因の一つとなっています。
次に「一か八(罰)か」ですが、これは語源により更に2つの用法に分かれます。一つは、「一か八か」は、丁半博打における「丁か半か」の「丁」「半」の字の上部を取ったものという考え方です。この場合は、起きる可能性は50%ということになります。この思考法の弊害は、不確かなものが起こる可能性は全て半々と見做して、確率の異なるものも同じように扱ってしまう危険性にあります。例えば、成功する可能性が10%(失敗率90%)のプロジェクトも成功率が90%(失敗率10%)のプロジェクトも同様の成功確率(50%)のように見做して、成功する可能性が本当は低いプロジェクトを選択してしまうのです。
一方、「一か罰か」は、サイコロ博打における「1」の「1以外(罰)」に由来するという考え方です。この場合は、起きる可能性は6分の1(17%)ということになります。この危険は、たいしたリターンもないのに極めて確率の低いプロジェクトを選択することです。
いずれも「一か八(罰)」も、運を天に任せるという点では共通です。
ろくろく検討もしないで「え~っ、面倒だ。一か罰か賭けてみよう」ではいけません。「人事を尽くして天命を待つ」心境で「運を天に任せる」ことにしたいものです。ビジネスにはリスクは付き物で、ノーリスク・ノーリターンですので、リスクを取らなれければリターンは望めません。しかし、気を付けていただきたいのは、リスクさえ取れば必ずリターンが得られるというものではないのです。だからこそ、適切にリスクを取ることが必要なのです。そのためには、確率を冷静に判断することが大切になるのです。