私は常日頃から経営理念を制定し浸透させることの大切さを説いてきました。
実際、私のクライアントのほとんどが経営理念を必要としています。
しかし、一方で、経営理念が必ずしも必要ではない会社が存在することも事実です。実際、日本が高度経済成長を続けていた時代には、経営理念など見向きをされませんでした。現在でも、急成長中の会社には、経営理念を制定していない会社も少なくありません。
それでは、経営理念不要の会社とはどのような会社でしょうか。
それは、ズバリ「簡単に売上げが上がる会社」です。
簡単に売上げが上がる会社では、値下げをする必要はありません。値下げをしなくても売上げを上げることができるからです。結果、売上高だけでなく、利益も上がります。利益が上がるので給与や賞与も上がります。また、規模が大きくなるので、人もドンドン採用します。
簡単に売上げが上がる会社では、人を騙す必要はありません。また、騙さなくても売上げを上げることができるからです。
このように「簡単に売上げが上がる会社」では、会社も社員も満足しているので、経営理念など必要がないのです。というより、ほとんどの会社は、誰かから明示されない限り、「売上至上主義」が暗黙のうちに経営理念となっており、それが社員に浸透しているのです。そして、「簡単に売上げが上がる会社」では、わざわざ別の経営理念を作成しなくても、「売上至上主義」という経営理念で上手くいっているのです。
さて、「簡単に売上げが上がる会社」も、時の経過につれ、そのほとんどが「簡単には売上げが上がらない会社」になっていきます。
簡単には売上げが上がらない会社では、社員にどのようなことが起こるでしょうか。典型的な事例として2つあげます。
一つは、社員は、売上達成のために、過度に値下げを行ったり、過度に広告宣伝や接待にお金を使うようになります。その結果、売上はあがるが、利益はさがるという現象が起きてしまいます。こうなると「売上至上主義」から「利益至上主義」へ経営理念の変更が必要となってきてくるのです。経営理念を正式には制定していない会社では、暗黙の経営理念を打ち消すために、経営理念を作成する必要がでてくるのです。
もう一つは、社員は、売上達成のために、消費者に嘘を付いたり、関係会社に在庫を押し付けたりと不正なこことに手を染めることになります。こうした行動は、短期的には売上げをあげることができますが、長期的には売上も利益を上げることはできせん。それどころが、不祥事が発覚すれば、会社の存在さえ危うくなりかねません。こうなると「売上至上主義」から「顧客満足」や「顧客第一主義」、「法令遵守・社会規範尊重」へ経営理念の変更が必要となってきてくるのです。
簡単には売上げが上がらない社員の中には、売上も達成できず、かといって悪事に手を染めることができずに悶々としている人も多いのです。そうした社員に対して、会社の理念が「売上至上主義」から「顧客満足」や「顧客第一主義」、「法令遵守・社会規範尊重」へ変更したと伝えることは、とても意義あることなのです。そうすることで、社員にも明るさと活気が戻ります。
成長分野にあるイケイケドンドンの会社は、経営理念など無くても、利益を上げることができます。むしろ、経営理念など作っている暇があれば、営業活動に専念した方が手っ取り早いかもしれません。しかし、やがては経営理念を変更する必要が出てきます。そして、変更は遅くなればなるほど新しい経営理念を浸透させるのは大変なのです。したがって、イケイケドンドンの会社でも、経営理念を見直すことに越したことはないのです。