今月は八月でジョイント通信も第八八号、末広がりが続いて縁起がよいですね。今回は、常識外れの経営理念を掲げ、常識外れの経営なのに伸び続けている会社を紹介します。
その会社とは、鹿児島県を中心に大型小売店を運営している株式会社マキオで、「利益第二主義」を経営理念にしています。
この会社では、消費者の利便性を第一に考えることから、「利益第二主義」を標榜しているとのことです。
ちなみに、「安全第一」というスローガンがありますが、これは、世界最大級の製鉄会社であったUSスチール社長のエルバート・ヘンリー・ゲーリーが決めた標語だそうです。ゲーリ氏は、当時の「生産第一、品質第二、安全第三」という会社の経営方針により労働者が苦しんでいたことに心を痛めて、人道的見地から、経営方針を抜本的に変革して、「安全第一、品質第二、生産第三」としたそうです。
さて、この株式会社マキオでは、「管理」を徹底的に排除しています。驚いて、「管理」の意味を改めて調べてみると、「(売上や利益などについて)ある基準から外れないように統制したり維持したりすること」です。
この言葉の意味から導き出される結論としては、①基準が高ければ、管理の必要性は低くなる。②管理する以外に、ある基準から外れないように統制したり維持したりすることができれば、管理の必要性は低くなる。
こうした観点から株式会社マキオの経営手法を診てみると、なるほど「管理」は(ほとんど)必要のないことに気付きます。
株式会社マキオでは、安く土地を購入し建物の坪単価を安くすることにより、販売価格を近隣相場より1割ほど安くしても、利益の出る体制を整えました。この時点で、少々管理に手を抜いても、売上が上がり利益の出る仕組みが整っていたのです。
ここが大切なポイントです。管理しないことが原因で利益が上がるという結果(管理省略→利益向上)という関係にあるのではありません。利益が上がる仕組みになっているので、あまり管理をしなくても赤字にならない(利益体質→管理省略可能)という関係にあるのです。
例えば、株式会社マキオが運営するス-パーのA-Zスーパーセンターでは、顧客の望む商品なら、年数個しか売れなくても、売り場に並べる方針で、醤油だけでも鹿児島産を中心に約260点あるそうです。間違いなく赤字となっている商品も多いと思います。これも、利益の上がる商品が多いので、少々商品管理に手を抜いても赤字にならないだけの話です。
つまり、全体として利益が出ているから管理しなくても大丈夫ということであり、管理しないから利益が上がるというわけではないのです。上手く管理すれば利益が更に増加するのは明白です。
実際、このスーパーの店員の接客態度には問題も多く、接客の質を向上させるような管理体制を整えれば、もっと売上・利益が増加することは間違いないでしょう。
では、何故、株式会社マキオでは、(利益)管理に力を入れないのでしょうか。それは、同社の経営理念が、「利益第一主義」ではなく、「消費者利便性第一主義」だからです。
つまり、会社の創業者がギチギチ管理してまで利益を上げようとは思っていないからなのです。実際、株式会社マキオでは、企業として成立するために最低限必要な利益さえ出せばよいという理念で経営されており、会社の予想より利益が上がりすぎたので、高齢者と身体障害者を対象に5%のキャッシュバックを行ったそうです。
また、ここまでくれば、何故、商品管理を実施しないかの謎も解けます。消費者が欲しがっても赤字商品は仕入れないという「商品管理」を行えば、優先順位が2番目の利益の向上に役立つかもしれませんが、優先順位が1番目の消費者の利便性を損なうことになるからです。
この会社の例でも分かるように経営理念が異なれば、経営手法も異なって当然であり、むしろ、経営理念が決まれば、経営手法も自然と決まってくるものなのです。
だからこそ、経営理念が大切なのです。