お客様に喜んでいただきながら、利益も十分に確保できるような仕事のやり方って無いものでしょうか。この悩みに答えるのは、バリューイノベーションという考え方です。
「現在のような厳しい時代を乗り越えるにはイノベーション(innovation)が必要だ」と世界中で言われています。
我が国では、1958年の『経済白書』でinnovationを技術革新と訳されて以来、イノベーション=技術革新と思い込んでいる方が多いようです。その結果、「私は文系だからイノベーション(=技術革新)は無理だ」とか「我が社は、サービス業だからイノベーション(=技術革新)は関係ない」と考えている経営者も多いことでしょう。
しかし、実は、このイノベーションは、技術の革新だけには限定されない、新しいサービスの提供や新しい価格体系など、ビジネスモデルの革新も含まれます。
このイノベーションの中で、近年、世界中で大きな成果を上げているのが「バリューイノベーション」です。これは、ヨーロッパの有名なビジネススクールINSEADのW・チャン・キムとレネ・モボルニュが提唱した概念です。バリューイノベーションとは「買い手に対していまだかつてない価値を提供しつつ、利益の上がるビジネスモデルを構築することによって既存市場の境界を再定義すること」と定義されています。チョット難しいですね。簡単に言えば、お客を喜ばせても儲かるように仕事のやり方を変えることです。
これまでは「顧客満足」の重要性は認識しつつも、実際に顧客を満足させるとなると、高品質の商品・サービスを提供するのでコスト倒れになるか、低価格で提供することで採算割れしてしまい、結局は、儲からないというケースが殆どでした。しかし、発想さえ転換すれば、顧客を満足させつつ儲かるやり方を見つけることが出来るはずだというのです。 例えば、2011年2月号で紹介したQBハウスによる「1,000円カット」も一つのバリューイノベーションなのです。「1,000円カット」は、買い手に対していまだかつてない散髪を速く行うという価値を提供しつつ、シャンプーや顔ぞりを省略することなどにより利益の上がるビジネスモデルを構築することによって 組合に守られてきた理容業という既存市場の境界を再定義することに成功したのです。
任天堂のWiiもバリューイノベーションの成功例です。任天堂のwiiは、ゲーム機業界において、健康に良いというかつてない価値を提供しつつ、比較的ロースペックのハードウエアを使うことで儲かるビジネスモデルを作り上げました。
実は、『クーザ』を後援しているシルク・ドゥ・ソレイユもバリューイノベーションの成功例です。シルク・ドゥ・ソレイユは、サーカス業界において、豊かな芸術性を加えることでかつてない価値を提供しつつ、動物を使わないことなどで儲かるビジネスモデルを作り上げました。
このバリューイノベーションを成功させるには、四つの質問に答えるだけでいいのです。
その四つの質問とは、
①すっかり取り除くものは何か、
②大胆に減らすものは何か、
③大胆に増やすものは何か、
④新たに付け加えるものは何か です。
皆さんも、この四質問で自分の業界を再定義してみては如何でしょうか。
お客を喜ばせつつ儲かるような仕事のやり方を思いつくかもしれませんよ。