経営者の皆様から、「社員にやる気がない。やれといったことはやらないし、やるなといったことは止めないで困っている。」といった相談をもちかけられます。最近は、景気後退の影響か、特にこの種の相談が増えています。今回は、このような問題へのアドバイスを行います。
1.やる気がないのが問題か
売上高の減少など営業成績が不振に陥った場合、「訪問回数が少ないのが問題であり、それは社員のやる気がないからだ」と決め付ける上司が多いようです。
しかし、実際には、社員の能力や知識に問題があるため契約にまでいたらないケースも多々あります。もし、社員の能力や知識に問題があるのであれば、いくら訪問回数を増やしても売上を伸ばすことは期待できません。かえって、クレームやトラブルを増やす結果になりかねません。このような場合、やる気を出させるより、社員教育などを確(しっか)り行い、能力アップや知識向上をはかる方が先決です。
2.キチンと褒めているか
与えた課題をクリアした場合、キチンと褒めていますでしょうか。人々は、ある行動を取ったときに起こる結果に基づいて行動するものです。例えば、ある行動をとったとき、褒められるなど気持ちの良い結果を経験すると、再度その行動をとろうとするのです。反対に、頑張って与えられた課題をクリアしたのに評価されなかったのでは、やる気を無くしてしまいます。ですから、課題をクリアしたらキチンと評価してください。
(ペナルティも大切)
反対に与えた課題をクリアできなかった場合は、キチンと叱ってください。与えられた課題をクリアしなくても何もペナルティがないのであれば、次からもわざわざ苦労して課題をクリアしようとは思わないでしょう。
また、ペナルティについては、①事前に明確にしておくこと、②確実に実行すること、の2点に注意して下さい。事前に明確にしておかないと社員からの不信感を招くことになります。
また、確実にペナルティを実行しなければ、社員は、会社側を甘くみて、指示を守ろうとしなくなります。その結果、社員は、「与えられた課題をクリアしないとペナルティを課す」といっても、単なる「脅し」と考えて、行動を変えなくなります。
3.褒賞(ほうしょう)は必要条件
与えた課題をクリアしたら必ず何らかの褒賞を出すことにしてください。褒賞には、即効性・確実性が重要です。年に2回のボーナス時に支給額を加算するというのは、出さないよりはましですが、即効性・確実性には欠けます。
ある美容室では、一日の売上目標を達成した日には、その日に現金で報奨金を支給することにしましたが、即効性・確実性のあるこの方式の効果は絶大でした。
もし、与えた課題をクリアしても利益拡大につながるかどうかわからないので、結果をみてから、褒賞は決定したいと考えているとすると、それは大問題です。社員の立場からみれば、効果があるかどうかもわからないことを強制されていることになるからです。
4.ペナルティよりインセンティブ
ペナルティを課すかインセンティブを与えるかは経営者にとっては悩ましいところです。何故なら、ペナルティ(罰金)を課すなら、一時的にコスト削減になり、インセンティブを与えるとなると一時的にコスト増加になるからです。しかし、あえていうと、「北風と太陽」の寓話にあるとおり、インセンティブを与える方が望ましいといえます。社員がインセンティブを望むことはもちろんですが、経営者にとっても良い点があります。それは、通常、ペナルティ制度をとった場合、社員はペナルティとならない程度にしか努力しませんが、インセンティブ制度の場合、際限なく努力するからです。
5.課題は適切か
与えた課題に対して社員の取り組みが鈍い場合、それは、社員がその課題を達成することが業績向上に結びつかないと考えているケースが多いのです。一度は努力したが、その後に努力しなくなった場合、その課題を達成することが業績向上に結びつかなかったことを経験した可能性が高いと考えられます。つまり、やってもムダと実感したと考えられます。この場合、与えた課題を達成することが本当に業績向上のためになるのか検証してみる必要があります。誤った(効果の無い)課題を与え続けることは、会社の当面の業績にとってマイナスになることはもちろんですが、経営側が信頼を失うことを通じて、会社は更に大きなダメージを受けることになります。