役員給与の業績悪化改定事由
平成20年12月に、国税庁の役員給与に関するQ&Aで、役員給与の額を減額する場合の業績悪化改定事由について提示されたので、取り上げたいと思います。
平成19年度の税制改正で、平成19年4月1日以後に開始する事業年度について、役員給与に対する課税の取り扱いが変わったことは記憶に新しいことだと思います。
その内の一つに定期同額給与の給与改定事由がありました。
定期同額給与とは、支給時期がひと月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与のことで、定期同額給与に該当しない場合は、役員給与の損金算入ができなくなります。しかし、
① |
その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までにされた役員給与の改定 |
② |
法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これら類するやむ得ない事情によりされた改定 |
③ |
法人の経営状況が著しく悪化したことその他これらに類する理由によりされた改定(当然、減額に限ります。)により、役員給与が変更され、その改定の前後において同額が継続して支給されていれば、それは定期同額給与に該当するものとされて、損金算入が認められています。 |
この場合、③の「経営状況が著しい悪化」の判断基準が抽象的であったので、その指針が平成20年12月の国税庁のQ&Aで提示されました。
Q&Aでは、業績悪化改定事由による改定に該当する事例として次のものをあげています。
① |
株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合 |
② |
取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合 |
③ |
業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合 |
①については、株主が不特定多数のものからなる法人が業績等の悪化に対応して行うものが、該当するものと考えられており、同族会社の場合、役員給与を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を、具体的に説明できるようにしておかないと困難であろうと思われます。
②については、取引銀行との協議状況等により、これに該当することが、判断可能であると考えられます。
③については、経営状況の改善を図るための計画によって、判断可能であると考えられます。この場合、その計画は、取引先等の利害関係者から開示等を求められれば、これに応じられるものということになります。
なお、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、業績悪化改定事由には該当しないことには留意ください。