真夏の暑い季節に気温が20度であれば、大変涼しく感じるでしょう。真冬の寒い季節に気温が20度であれば、大変暖かく感じるでしょう。
また、暖かいお風呂に入った後に水温30度のシャワーを浴びると冷たく感じるのに、冷たい海で泳いだ後に水温30度のシャワーを浴びると暖かく感じます。
同じ気温なのに不思議ですね。
こうした現象を心理学では「コントラストの原理」といいます。
実は、この「コントラストの原理」は、ビジネスにも応用できるのです。
例えば、初めに(通常の値段より)高い値段を提示しておいて、その後で通常の値段を提示すると、相手は通常の値段が安く感じられて、売買が成立しやすくなるのです。野球で高めの球を見せ球に使って、低めのストライクで仕留めるのに似ていますね。
逆も真(しん)なりです。例えば、最初にキャンペーン価格で販売してしまうと、通常の価格に戻しただけなのに、相手からすると通常の値段が高く感じられて、(一時的に)売上が大幅に減少することがあります。
マクドナルドは、2000年に、それまで130円だったハンバーガーを平日に限り半額の65円に値下げするという「ウィークデイ・スマイル・プログラム」を開始しました。そのお陰で平日の売上は上がったそうですが、一方で休日の130円という通常価格が、高く感じられるようになってしまい困ったようです。
コントラストの原理は、同じ商品の価格ではなく、異なる商品の価格を利用することも多いのです。
例えば、スーツとセーターを買いたいお客様がいるとします。優秀な店員は、スーツから話を進めます。スーツを買うと決めた後では、セーターは安いものに感じられるからです。更に優秀な店員は、その他の小物も進めるそうです。10万円払った後では、3,000円程度の出費は余り気にならなくなるからです。
また、自動車のセールスでもコントラストの原理がよく利用されます。例えば、割安のグレードの車種に決めさせた後で、色々なオプションを勧めることが多いものです。車両本体価格に比べると一つひとつのオプションの価格は取るに足りないように思えて、オプション品も購入しがちなのです。結局、高いグレードの車種より高くなることもあります。
「コントラストの原理」は上手く利用すると強力な武器となりますが、反対に気が付かないうちに利用されていることもありますので、お気をつけ下さい。