「幸せのちから」は、2006年公開のアメリカ映画で、ホームレスから億万長者になるアメリカンドリームを実現させた人物クリス・ガードナーの実話をもとにした感動作です。
仕事で行き詰まったとき、やる気がでないときには特にお勧めの映画です。
（あらすじ）
ウィル・スミス演じるクリス・ガードナーは新型医療機器のセールス販売をしていました。しかし、この商品が思うように売れず、アパートの家賃も払えないほどの苦しい生活が続いていました。
ある日、証券会社の営業マンなら学歴がなくても金持ちになれることを知ります。そこで、証券会社の営業マン養成研修コースに応募することにしました。
丁度その頃、妻のリンダが苦しい生活に耐えかねて家を出て行ってしまいます。しかも、クリスはアパートの持主から退去命令を出されてしまいます。更に、大事な面接の前日には駐車違反で一晩警察署に拘留されてしまい、シャワーも浴びず着替えもしないで面接する羽目に陥ります。
幸い面接には合格しますが、20名の合格者の中から研修後に正式に採用されるのは、たった1名だけだと告げられます。しかも、６か月の研修期間中は無給です。
研修期間中に、彼の全財産は21ドルにまで減ってしまい、新しいアパートも追い出されてしまいます。追い出された日には、駅のトイレで息子と夜を明かすことになります。その後は、ホームレス向けの無料宿泊施設などに寝泊まりしながら、研修を続けます。
クリスは、果たしてどのようにして幸せをつかむのでしょうか。クリスの持つ「幸せのちから」とは何なのでしょうか。
今回は、脳内ホルモンの観点から説明します。
脳内ホルモンは、脳より分泌され体内の細胞を刺激し、人の行動に強い影響を与える物質のことです。 脳内ホルモンのうち、特にモチベーションの維持・増進に効くのが「ドーパミン」です。
ドーパミンは、仕事が上手くいったときなどの目標が実現されたときに、達成感と共に分泌されます。その結果として幸福感が満たされるので、ドーパミンは「幸福物質」とも呼ばれています。実は、ドーパミンは目標を達成したときだけでなく、目標や計画を立てた時点で分泌されます。目標に向かって、あれこれと努力したり工夫したりする過程でドーパミンが分泌されていくのです。
クリス・ガードナーの場合、６か月の研修期間の後には正社員になるという明確な目標があったので、ドーパミンがどんどん分泌される状況にあったわけです。
また、人間は、不安や恐怖を感じると「ノルアドレナリン」という脳内物質が分泌されます。
そして、このノルアドレナリンが出ると、注意力、集中力が高まり、結果として素早く判断できるようになり、それと同時に記憶力、学習能力、作業遂行能力など、ほとんどの脳機能が高まります。いわゆる「火事場の馬鹿力」が出るのも、ノルアドレナリンのお陰なのです。
クリス・ガードナーの場合、面接試験には合格したものの、研修期間を経て、正社員になれるのは20人に１人という狭き門だったわけで、失敗すれば本当のホームレスに陥ってしまうという、嫌でもノルアドレナリンが分泌される状況にあったわけです。
しかも、このノルアドレナリンは、デッドラインがあると特に分泌されるという特徴があります。
この映画の場合、研修期間は6か月と決まっています。故に、この間には多くのノルアドレナリンが分泌されたのです。
辛いことに耐えるには「エンドルフィン」という脳内ホルモンが大切です。このエンドルフィンは、別名、脳内モルヒネともいわれています。実際、本当のモルヒネの６倍の鎮痛効果があるといわれています。
このエンドルフィンは、人のために行動しているときにも放出されるそうです。
クリス・ガードナーの場合、駅のトイレで一晩を過ごすことになったり、ホームレス向けの無料宿泊施設などに寝泊まりしながら、研修準備するなど、さぞや辛かっただろうと思います。
しかし、クリスの場合、自分の為というより、愛する息子の為に頑張るという気持ちが強かったので、エンドルフィンが分泌され、苦しみに耐えることができたのです。
