今回は「経営/人生に役立つ映画」の第９回で、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を紹介します。
ウルフ・オブ・ウォールストリートは、2013年封切のレオナルド・ディカプリオ主演の映画で、実在の株式ブローカー「ジョーダン・ベルフォート」の回想録を映画化した実録ドラマです。
（あらすじ）
レオナルド・ディカプリオ演じるジョーダン・ベルフォートは、学歴や人脈もないまま、22歳でウォール街の投資銀行で働きだします。巧みなセールストークで人々の心を瞬く間につかみ、斬新なアイデアを次々と繰り出しては業績を上げ、猛烈なスピードで成り上がっていきます。そして26歳で証券会社を設立し、約49億円もの年収を得るまでになります。富と名声を一気に手に入れ、ウォール街のウルフという異名で呼ばれるようになったジョーダンは、浪費の限りを尽くして世間の話題を集めていきます。しかし、その先には思いがけない転落が待ち受けていました。
（ピンクシート株）
ジョーダンは名門証券会社に就職しますが、証券外務員資格を得るまでは雑用係でした。やっと、証券外務員試験にパスし、これから自分で稼ごうという日に市場はブラック・マンデー（大暴落）に襲われます。
会社を解雇されたジョーダンは、郊外にある小さな証券会社に職を求めて面接に訪れます。
その証券会社の取扱商品は、証券取引所に上場されていない株式であるピンクシート株です。ピンクシート株とは、別名、ペニーストックとも呼ばれ、通常、1ドル未満の価格で売買されます。価格の変動率が高いのでハイリスク・ハイリターンですが、価格が安いのでルーレットや宝くじ気分で購入する人も少なくないのです。単価が低いので、手数料率は50%と非常に高く設定されています。
このピンクシート株には、胡散臭い銘柄が多いので、プライドの高い名門証券会社や一流証券マンは手を出しませんでした。この証券会社の従業員も全てうだつのあがらぬ冴えない者ばかりで、ジョーダンのライバルになるような社員はいませんでした。ジョーダンから見れば、ピンクシート市場は、競争のない「ブルー・オーシャン」でした。しかも、手数料率は、これまで扱っていた上場株式の50倍もあります。
こうしてジョーダンは、プライドを捨てて「ブルー・オーシャン」に進出することで、これまで培ったセールストークを活用してガンガン稼ぎ始めたのです。
ピンクシート株は基本的に下層階級向けの商品でした。その結果、手数料率は高くても売買代金が小さいので、手数料金額は少額でした。
それをジョーダンは、富裕層に売ることにしたのです。富裕層なら売買代金も大きくすることができるので、手数料率が高い分だけ手数料金額も大きくなったのです。市場開拓戦略が大成功したのです。
（ペンを売ってみろ）
ジョーダンは、数年で会社を辞めて、自分自身で証券会社を立ち上げますが、一流の営業マンを雇用することはできませんでした。そこで、ウェートレスやドラッグの売人をやっているようなチンピラたちを採用して、セールスマンに育てることにします。次は、面接のワンシーンです。
ジョーダンはポケットから1本のペン取り出して、社員候補者に渡し、「俺にこのペンを売ってみろ」と投げかけます。ある人は「このペンの性能は本当にいい。」とセールスしますが、不合格。凄腕の麻薬の売人は、「この紙ナプキンに名前を書いてくれ。ペンはあるかい？」と言い放ちます。既にペンを渡してしまっているジョーダンは書くものが無く困ります。そこで、売人はニヤッと笑ってペンを差し出したのです。合格。
売人はそのペンがどんなに良いものかということには一切触れず（商品説明は行わず）、その代わり相手にとってペンが必要となる状況を作り出したのです。言い換えると、売りたい「ペン」という商品に対する需要を自ら創出したのです。一般的なセールストーク無しに商品を売ったのです。しかも、相手に恩を売り、相手に感謝されながら、商売を成功させたのです。
