今回は「経営/人生に役立つ映画」の第3回で、「マネーボール」の第2回です。
さて、ビリー・ビーンは、どのようにして過小評価されている人材を発見したのか?
皆が見落としている尺度に注目したのです。
プロ野球で打者を評価する指標としては、最も有名なものは「打率」です。多くの人が打率で野手を評価します。
この打率は打数を安打数で割って計算します。
打数とは、打席数から四死球等を除いたものです。
一方、あまり注目されていませんでしたが、同じような指標に「出塁率」というものがあります。これは、文字通り、出塁できた確率のことです。
この出塁率ですが、かつては記録として算出する慣習が特に無く、常に打率に比べて評価が低く、日本ではタイトル受賞者の選定の際に算出される程度でした。実際、セ・リーグでは、ながく出塁率の概念が存在しておらず、現在でも公式記録として出塁率を計算していないそうです。
さて、打率と出塁率の違いですが、簡単にいうと、四死球が入っているかどうかということです。
打率 =安打数 ÷ 打数
出塁率 = (安打数+四死球数)÷ 打席数
例えば、トランプ氏が、10回打席に立って、安打3本、四死球が0回の場合、打率は3割、出塁率も3割と計算されます。
一方、オバマ氏が10回打席に立って、安打1本、四死球が5回の場合、打率は2割、出塁率は6割と計算されます。
ビリー・ビーンが出塁率に注目するまでは、ほとんどの人が打率で評価するため、トランプ氏の方がオバマ氏より高く評価されていたのです。
しかし、ビリー・ビーンは、「打者がアウトにならない率」である出塁率が打率よりも得点に結び付く要因であることに注目しました。打率は低いが出塁率が高い選手を獲得していったのです。いわゆる選球眼の良い選手に注目したのです。
(打率は低いが)出塁率が高い選手の評価は低いので、他の球団は興味を示さず、ドラフトでも競争がありません。
また、打率は低いが出塁率が高い選手は過小評価されているため、ビリー・ビーンは、トレードでも安い年俸で獲得できたのです。
こうして、ビリー・ビーンは出塁率・選球眼といった新しい尺度で優秀な選手を、割安な年俸で採用していきました。
ビリー・ビーンの素晴らしいところは、その尺度をリクルートに活用しただけに留まらず、既存の選手の評価にも活用したのです。こちらは、次回。