今回は「経営/人生に役立つ映画」の第2回で、「マネーボール」の紹介です。
映画「マネーボール」は、2011年のアメリカ合衆国の野球映画です。ただの野球映画と違うのは、野球選手・監督が主役なのではなく、球団の経営者が主人公というところです。その経営者とは、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャーのビリー・ビーンで、ブラッド・ピットが演じています。
そのビリー・ビーンが、弱小貧乏球団を強くするため、野球界に革命を起こす様子を描いた映画です。周りに味方がおらず、選手にも監督にも嫌われる中で戦い抜いた男の姿が丁寧にそしてドラマチックに描かれています。
このビリー・ビーンは実在の人物で、映画もほとんど実話通りに作られており、それだけにリアリティと説得力があります。
(格差社会への挑戦)
映画の舞台となっている2000年代初頭のメジャーリーグは、資金力のある球団と貧乏な球団との格差が広がり、良い選手はことごとく金持ち球団へ引き抜かれる状況が続いていまいた。貧乏球団のオーナーからすれば、「もはや野球はスポーツではなく、金銭ゲームになってしまった」という嘆きの声が上がっていたほどです。
しかし、ビリー・ビーンが率いるオークランド・アスレチックスは、年俸総額が1位のニューヨーク・ヤンキースの3分の1程度だったにもかかわらず、2002年には全球団で最高の勝率を記録したのです。
例えて言えば、人件費に月1,000万円しか払えない広告代理店が月3,000万円払える会社より売上で上回るようなものです。どのようにして、この軌跡を起こしたと思いますか。
業績を上げるためには、[有効な戦略]と[強い実行力]が必要です。今回は、ビリー・ビーンが採った有効な戦略について紹介します。
(割高なものを売って、割安なものを買う)
戦略というと大げさですが、ビリー・ビーンが行ったのは「割高なものを売って、割安なものを買う」という極めてシンプルなものです。
この戦略は、他の業界、例えば、証券業界(株式投資)では常識です。世間で過大評価されている株式を売却し、そのお金を過小評価されている株式に投資すれば、パフォーマンスを上げることができます。
例えば、同じ年50円の配当なのに、A株は1,000円でB株は500円だとします。もし、A株を保有しているなら、A株を売って、B株を買うだけで、配当金を2倍にすることができます。
ビリー・ビーン(オークランド・アスレチックス)の場合、ジョニー・デイモン、ジェイソン・ジアンビ、ジェイソン・イズリングハウゼンという割高な選手を放出して、スコット・ハッテバーグやチャド・ブラッドフォード、デビッド・ジャスティス、ジェレミー・ジオンビといった割安な選手で補強しました。
例えば、チャド・ブラッドフォード投手は、「変な投げ方をする、球の遅い」というだけで、成績は良いのにも関わらず、不当に低く評価されていました。デビッド・ジャスティスは、もう盛りの過ぎた老兵だということで過小評価されていました。
そして、結果として、過小評価されていた選手たちは、期待以上の成績を残してチームの勝率に貢献したのでした。
それでは、ビリー・ビーンは、どのようにして過小評価されている人材を発見したのか?
これは次回以降のお楽しみです。