【法人税-支払側-】
判断に悩むのは、損金算入時期だと思います。
一括して役員退職金を支払う場合、原則として、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度の損金の額に算入されます。もちろん、損金経理が要件です。
しかし、退職給与を実際に支給した日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理をしたときは、その損金経理をした事業年度の損金の額とすることができます。(法基通9-2-18)
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役員退職金を分割支給する場合も同様です。つまり、原則どおり、株主総会等の決議のあった日の属する事業年度に全額経理により損金の額に算入することはもちろん可能です。
或いは、決議のあった日の属する事業年度に支払った額のみ損金経理し、残額は実際に支払った事業年度に損金経理することによりその支払った事業年度の損金の額に算入することもできます。
一方、役員退職年金の場合には、損金算入時期は、株主総会等の決議等のあった日でなく、当該年金が支給すべき時の損金の額に算入することとなります。(法基通9-2-19)
【所得税-受取側-】
役員退職金は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する年の退職所得とされます。一方、役員退職年金は、その支給を受けた年の雑所得となります。
【退職一時金と退職年金の判定】
役員退職金を分割で支給する場合、それが役員退職年金と認定されないか問題となります。
そこで、役員退職金の分割支給となるか、または、役員退職年金となるかの判断が必要となりますが、その基準は、支給する側の制度により形式的に決定されることとなります。
具体的には、役員退職金の支給を決議した株主総会議事録に『役員退職金規程により一時金として支給されるものではあるが、会社の資金事情等を考慮し、また、受給者である○○○の了承を得て○年間の分割払いとする』といった旨の決議があれば、形式的に判断ができ、それが役員退職金である(退職年金でない)ことの根拠となります。
※ 例えば、3月決算の会社Aにおいて、平成17年3月20日で退任する取締役甲について、3月の取締役会で役員退職金慰労金規程に従って2,000万円を3月31日に支給し、その後、5月25日の株主総会で正式に承認されたとします。この場合、平成17年3月期に2,000万円損金算入しても、平成18年3月期損金算入してもOKです。