米国で最も有名な小説家であるF・スコット・フィッツジェラルドは、「一流の知性と言えるかどうかは二つの相反する考え方を同時に受け入れながら、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判断される。」と述べています。
確かに経営上の課題に対しても全く違う主張がされていることが多々あります。今回は、清掃作業について取り上げてみます。掃除は人に任せるべきだと主張する人もいれば、自分ですべきという主張する人もいます。
【アウトソーシング派の主張】
清掃業務は、人に任せるべきだと考える人の主張は、例えば、次のようなものです。
家事はなんでも自分でやればタダ。そう思っている人はいませんか？ 共働き家庭では、これは大きな間違いです。特に仕事も家庭も立て込んでくる、年末を控えた時期。あなたの労働力と可処分時間には限りがあります。あなたの１時間には、価値があるのです。そこを忘れないようにしましょう。
たとえば、あなたの仕事を時給換算してみてください。その労働対価を念頭に、忙しい年末の貴重な休日に、油だらけの換気扇を分解してそうじする時間と手間を考えます。どうでしょう。優秀な管理職上司なら、「それはアウトソーシングして、あなたは自分にしかできない役割に戻りなさい」と指示するのではないでしょうか。
家事のアウトソーシングは、時間に限りのある人にとっては必要不可欠な生活の知恵です。さらに、現代の住宅は工業製品が増えていることもあり、素人には手が出しにくい構造のものが多くなっています。そうじの外注は、時間の節約になるだけでなく、家の設備を適切にメンテナンスすることにつながり、結果的には製品寿命を延ばしてコスト削減につながります。大そうじの外注費用は経費として家計に計上しておくようにしましょう。
（生活コラムニストの ももせ いづみ 氏のコラムよりhttp://allabout.co.jp/gm/gc/61664/ ）
【自前主義派の主張】
株式会社イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏は自ら掃除をすることを強く勧めています。鍵山氏は、みずほ総合研究所が発行した小冊子の中で次のようなエピソードを紹介しています。
掃除によるご縁がもとで、ときには神様の恩恵のような幸運にも恵まれました。
わが社は東京の一等地、千代田区三番町にビルを保有しています。英国大使館の裏にあり、行商からスタートした会社が手に入れられるような土地ではありません。
当時、近くのアバートを仕事場兼住居にしていた私ども夫婦は、毎朝近所の掃除をしていました。雨の日も風の日も、暑い日も寒い日も休みませんでした。アパートの前に咲いていたツツジの手入れも、よく手伝っていました。ささいなことですが、それを見ていた地主さんが感動し、その土地の譲渡を持ち掛けてくださったのです。しかし、私にはその土地を購入するだけの資金はありません。お断りしましたが、「いくらなら出せるのですか」と重ねて尋ねられました。恐る恐る金額を示すと、何とその金額で譲ってくださるというのです。タダ同然でした。
それまでは銀行さんで数百万円の資金を借りるのも大変でしたが、この土地を手に入れて以来、無条件で億単位の融資を受けられるようになりました。おかげで、各地にあったウサギ小屋のような施設を次々に改善することができました。
《コメント》
清掃作業を、雑務と捉えるか、修行と捉えるかによって、取り組み方が異なるのでしょう。
