ア メ と ム シ
ゆとり世代の特徴は「打たれ弱い」ということです。高圧的な注意の仕方、頭ごなしに怒るのでは彼らはそっぽを向くだけです。それどころか、「ちょっと注意したら自律神経失調症の診断書を持って休ませてくれと言ってきた」とか、 「軽く叱ったら仕事辞めたいと伝えてきた」ということもあります。
従来はアメとムチで指導するのが普通でしたが、ゆとり世代には、ムチは効果がないどころか、逆効果になるのです。「怒る」というコミュニケーション方法では、ゆとり世代との意思疎通はできないのです。これまでの人生で大人から叱られたり、怒られたりする経験がないので、ストレス耐性が低いのです。
失敗した時にムチが使えないので、代わりに使うのがムシです。ムシといっても、仲間外れにするというのではなく、今どきの言葉でいうと「スルー」するということです。
確かに、心理学では失敗した時に罰を与えるのはあまり効果がないとされています。なぜなら、罰を与えることで、萎縮してしまい考える事をやめてしまうからです。
実際、アメリカのUCLAバスケットボール・チームの伝説的コーチ、ジョン・ウッデンは、この「アメとムシ」方法で、チームを12年間で10回もの全米チャンピオンに導いたのです。
「打たれ弱い」に加えて、「褒めて伸びる」のがゆとり世代の特徴ですので、この「アメとムシ」は特に有効なのです。
SWOT分析への応用
実は、この「アメとムシ」は経営戦略にも使える概念なのです。多くの企業で経営戦略を立案する際にSWOT分析を行います。SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunities (機会)、Threats(脅威)の4つに分けて、現状を分析する手法です。
その分析結果を利用する際に、とかく私たちは、「自社は○○の弱みがあるので、それを解決しなければならない」というように、自社の弱みを多く列挙して、それを解決しようと発想しがちです。それはそれで必要なことですが、確率的に言えば、たいした効果がないことが多いものです。実際、現在遅れていることの解決に努力したところで、せいぜい他社並みになる程度であり、それでは少なくとも競争優位にはなりません。
むしろ、自社の強みの分野をさらに強化することにより、他社が追従できないレベルにまで引き上げること、すなわち、コア・コンピタンスとして確立することで、競争で優位に立てるのです。しかも、これから先が不思議なのですが、自社の長所を伸ばしていく過程で、いつの間にか、弱点が無くなっていくことが少なくないのです。例えば、営業力に弱みがあるから営業力を強化するというのが、普通の発想です。しかし、商品力に強みがあるのであれば、むしろ商品の魅力を極めることに集中することで、販売がスムーズにいくようになり、その結果、営業部員にも自信が付いて、営業力が伸びるということがあるのです。