１．虫の良い相談に応えます
長年、経営コンサルタントをやっていますと「安全・確実で、しかも、手っ取り早く儲ける方法を教えて下さい」という虫の良い相談を受けることがあるものです。
ほとんどの場合、「そんな方法があるなら、こちらが教えて欲しいくらいですよ」と、やんわりと断りますが、稀に、答えを提示できることもあります。
ある美容室では次のような虫の良い相談を受けました。社長曰く「スタッフから忙し過ぎて休憩が取れないと苦情が出ているのですよ。でも、沢山のお客を待たせているのにスタッフを休ませるというのも気が引けるし、そもそも今以上に売上が減ると困るし…。スタッフは休憩させながら、売上は落とさないという方法はないですかね？」
私は即座に答えました。「簡単ですよ！値上げすればいいだけですよ！」
「えーっ？値上げしたら顧客が逃げませんか？」と相談者。「沢山のお客が待っているのですよね、少しくらい逃げたところで丁度いいのではないですか」と私。
渋々と値上げに踏み切りましたが、結局は、「値上げ効果で売上げは増加し、スタッフも休憩がとれるようになり喜ばれた」と感謝されました。
２．コスト管理より収益管理
適正なサービスを適正な価格で販売することを収益管理（「レベニューコントロール」）といいます。
当たり前のようですが、意外とこれができていないことが多いのです。
忙し過ぎたのは、価格に比べてサービスのレベルが高過ぎたのです。
ですから、サービスのレベルにあうような価格に修正すれば良いだけなのです。
実は、この相談者は同じ店名で複数の美容室を展開しており、同じ店名で料金を変えるという発想がなかったようです。よく調べてみると、その忙しい美容室（支店）は、時間をかけて非常に丁寧な施術をしていたのです。
時間をかけて丁寧な施術をしているので、お客様の評判は良いのですが、イスの回転数は上がらず、売上も伸び悩んでいたのです。
なんと、表面上は同じグループの美容室と同じ料金だったのですが、実質的には大幅なディスカウントをしていたのです。
つまり、値上げではなく、適正な価格に戻しただけなのです。その結果、適正な利潤が出るようになったのです。
これが収益管理による業績改善方法です。
ところが、世間一般には、コスト管理による業績改善方法が提案されがちです。「売上が上がらないのなら、賃金を減らせよ」といった発想です。しかし、コスト管理では根本的な解決にはならないのは明らかです。
３．カミは細部に宿る
収益管理は、細かく行えば、細かく行うほど、効果が大きくなります。
先ほどの美容室の場合は、一律に値上げを行いましたが、本当は、もっときめ細かく値段を設定した方が良いのです。
過去のデータを見れば、混むとき（時間帯・曜日・時期）と混まないときがあるものです。そのデータを利用して、料金を変化させればいいのです。
ある美容室では、混んでいる土曜日の料金を２割値上げし、暇な火曜日の料金を２割引きにしただけで、全体の売上が２割増えたそうです。
火曜日は値下げしたので単価は低くなりましたが、回転率が上がったので一日の売上は大幅に増加しました。土曜日は、フル回転の状態だったので、値上げしても施術人数には変化がなく、値上げ分がそのまま売上増加になったのです。
火曜日も夕方には少し忙しくなるので、昼間と夕方の値段を変えるともっと収益が上がるでしょう。雨の日には客足が鈍いのならば、雨の日には割り引きをするのもいいでしょう。
「神は細部に宿る」といいますが、価格設定やキャンペーンも細かく対応することが大切です。一度決めても、変化を見逃さないで、変化にできる限り早く対応することが大切です。そうすれば、安全・確実で、しかも、手っ取り早く儲けることができるのです。
紙幣(カミ)は細部に宿るのです。
