「成功はすべてコンセプトから始まる」という書籍(著者:木谷哲夫)があります。成功のすべてがコンセプトから始まるというのが言い過ぎでしょうが、コンセプトが重要なことは間違いありません。今回は、コンセプトについて解説します。
コンセプトの成功例
コンセプトで大成功を収めた事例としては、アップルのiPodが有名です。
iPodを技術的に説明すると「小型HDDを搭載したMPプレイヤー」となります。ピンときませんよね。
一方、iPodのコンセプトは「持っているすべての音楽をポケットに入れて持ち運べる」です。欲しくなりませんか?
MPプレイヤーとはMP形式のオーディオファイルを再生する機器のことで、携帯しても音飛びしないのが大きなメリットです。
iPodの発売前にもMPプレイヤーは沢山ありました。しかしそれまでのプレイヤーは容量が小さいので、いちいち聞きたい曲を入れ替えなければなりませんでした。この不便さの為、ヒット商品は現れませんでした。
そこを、スティーブ・ジョブは小型ハードディスクを搭載することで、自分の保有楽曲を全て持ち歩くことが可能にしたのです。
何故、コンセプトの勝利といえるのでしょうか?
実は、アップルが担当しているのはコンセプトだけなのです(厳密に言うとコンセプトに基づく設計と宣伝も担当)。アップルは何ら技術開発をしているわけではありません。既存の技術の組合せにしか過ぎません。実際、部品は全て外部から調達して、製造(組立)も完全に外部に委託しているのです。
それにも関わらず、利益は、アイデアだけのアップルの取り分の方が部品メーカーや組立メーカーより断然多いのです。
コンセプトの3要素
良いコンセプトには、戦略が凝縮されており、また、優先順位をはっきりさせることができます。
良い商品コンセプトは3つの要素が明確になっています。
その要素とは、①誰に、②何を、③どうやって、提供する。
iPodは、①楽曲の入れ替えに不便を感じている人に、②全て楽曲を保存・再生できるプレイヤーを、③MPプレイヤーに小型HDDを搭載することで、提供するという商品と表現できます。
凄いコンセプトとは良い組合せ
凄いコンセプトはイノベーションやクリエイティビティを伴います。イノベーションというと、新しい技術の開発だと誤解しがちですが、実はそうではありません。本来、イノベーションとはモノゴトの「新結合」を意味します。つまり、「技術」革新である必要もなければ、新しいものである必要さえないのです。既に存在し、広く知れわたっているモノやサービスを結合させて新しい商品やサービスを生み出せば、それも見事なイノベーションです。
また、スティーブ・ジョブも「クリエイティビティとは組合せに過ぎない」と言っています。事実、彼が「発明」したiPodは、MPプレイヤーとHDDの組合せに過ぎません。
プリクラ〈プリント倶楽部〉も、カメラとプリンターを組み合わせた写真シール印刷機というだけです。
回転寿司も、寿司職人とベルトコンベアーの組合せに過ぎません。因みに、回転寿司の生みの親(元禄産業の創設者)の白石義明氏は、飲食店組合の行事でビール工場を見学した時にオートメーション化された工場内をビール瓶がベルトコンベアーに乗って走っている様子を見て、「これだ!」と閃いたそうです。
コンセプトの実現にはワクワク感
コンセプト造りで大切なのは面白いことをやろうという気持ちです。「難しいかもしれないけれど、うまくいくとビックリするだろうな~」というワクワク感を持てるものが凄いコンセプトです。何故なら、簡単に実現できるコンセプトに人々は感動をしません。また、直ぐに実現するようなコンセプトは直ぐに多くの追随者が出てしまい、ビジネス的にも美味しくありません。実現するのは大変だけどトライしてみたいと思い続けるためには、ワクワク感が必要なのです。それも、実現したら家族・友人だけでなく世界中の人がビックリして大喜びするだろうな! というワクワク感です。
さあ、皆様も画期的なコンセプト(組合せ)を思い付けるように、アンテナを張って日々を過ごしてみませんか。