ビジネスマンは「どうすれば儲かるか」という問題に向き合っていることでしょう。経営者であれば尚更です。
「どうすれば儲かるか」というテーマは、経営者だけでなく、学者やコンサルタントも必死で取り組んできました。
多くの人々が悩みぬいた結果、大切なことが2つあることに気づきました。トコロとヒトです。
トコロとは、場所・市場のことです。儲かるためには、儲かる位置(ポジション)にいることが大切だというのです。これが最も大切だと考えている人々は、ポジションニング派と呼ばれています。確かに、飲食店など「立地が全て」などと言われています。
一方、ヒトとは、人材のことです。儲かるためには、儲ける能力(ケイパビリティ)のある人を確保することが大切だというのです。これが最も大切だと考えている人々は、ケイパビリティ派と呼ばれています。
学会では、どちらが大切かで論争が続き、その間に互いに「相手の戦略論では企業はダメになる」という研究成果を出しています。
さて、本当は、どちらが大切なのでしょうか。私は、鶏と卵の関係ではないかと思っています。儲ける能力(ケイパビリティ)のある人=優秀な人でないと儲かる位置を見つけることができないでしょう。一方、儲かる位置(ポジション)にいる会社でないと優秀な人材も集まらないでしょう。
ですから、「優秀なヒト⇒儲かるトコロ⇒優秀なヒト⇒儲かるトコロ」というように好循環に入ったところが、エクセレント・カンパニーとなるのでしょう。
トコロとヒトのどちらが大切かというのは、時間軸とも関係しています。つまり、短期的な視点か長期的な視点かということです。
短期的な視点では、もちろん、トコロが大切でしょう。手っ取り早く大儲けするには、儲かる場所を見つけて商売するのが一番でしょう。1,000円カットのQBハウスなどは良い例です。1,000円カットという短時間・低価格の散髪市場を発見して、そこで商売を始めたわけです。文字通り、向かうところ敵なしという状態でした。任天堂も、体験型ゲーム市場という美味しい場所を見つけて、Wiiという商材で一人勝ちしたのです。
問題は美味しい市場も長続きさせるのは難しいことです。1,000円カットも、現在は、競争が激化し、かつてのような勢いはありません。任天堂も、ここ数年は業績悪化が続いています。
やはり、長期的な視点では、ヒトが大切なのでしょう。優秀なヒトさえいれば、また、美味しいトコロを発見できるでしょう。そうした観点から、私が注目しているのは、ブラザー工業です。
ブラザーといえば、家庭用ミシンで有名でしたが、1991年に留学したときにお世話になったのが、ブラザーの電子タイプライターでした。このタイプライターはコストパフォーマンスが抜群に優れていて非常に驚いたのですが、このタイプライターが家庭用ミシンで有名なブラザーが製造していると知って再度びっくりしました。
また、2008年に事務所用の複合機を探していたところ、JUSTIOという複合機に出会いました。この複合機は、ランニングコストも含めて、コストパフォーマンスが素晴らしくて感激したのですが、この複合機がタイプライターでお世話になったブラザーが製造していると知って更に驚きました。あまり知られていないようですが、SOHO向けの複合機においては北米でトップシェアを誇っているそうです。
このブラザーこそ、「優秀なヒト⇒儲かるトコロ⇒優秀なヒト⇒儲かるトコロ」という好循環を達成している理想的な企業ではないでしょうか。