誰もが幸せになりたいはずです。しかし、多くの人はどうすれば幸せになれるのかについては真剣に考えません。それは目的地も考えずに走り回っているようなものではないでしょうか。さて、世界で最も幸せな国を探す旅をつづった書籍に「世界しあわせ紀行」（エリック・ワイナ―著、早川書房刊）というものがあります。この本は、全米ベストセラーとなり、18カ国語以上に翻訳されたものです。今回は、この本をベースに幸せについてお話します。
１．幸せは金で買える
多くの日本人は、お金儲けに夢中です。口では「お金には興味はない」と嘯いている人に限って、金銭に意地汚かったりします。また、嫌な取引先に頭を下げるのも、嫌いな上司にゴマをするのも、お金が欲しいからでしょう。それは、お金こそ幸せの源泉だからと信じているからではないでしょうか。ところで、本当に幸せはお金で買えるのでしょうか。
幸福（もしくは個人的満足感）についての最近の研究によると、なんと幸せは実際にお金で買えることが明らかになっているそうです。
ただし、お金で買える幸福には限度があって、その限度は驚くほど低いのです。ある研究によると、その限度とは年間約15,000ドル（日本円で約120万円）だそうです。
つまり、約120万円まではお金が増えれば、増えるほど幸せに感じるようになります。しかし、それを超えると、年収が増えても幸せになるとは限らないということです。確かに、お金持ちにも不幸な家庭は多そうですね。逆に決して裕福には見えないのに、幸せそうな家庭も少なくないですよね。
具体的な金額が120万円かどうかは別にしても、ある程度までしかお金では幸福は買えないというのは、科学的な調査に基づいた真実のようです。
２．嫉妬心・・・最大の敵
2013年の最も生まれて幸せな国第1位に選ばれたのはスイスです。
スイス人も幸せな国民として有名です。さて、スイス人の幸せの秘密は何処にあるのでしょうか。
あるスイス人は、それは「嫉妬心」であると言い放っています。
スイス人は、幸福の最大の敵が嫉妬だということを本能的に知っていて、他人の嫉妬を買わないためならどんな努力も厭わないそうです。 例えば、スイス人は「お金」について話すのを極端に嫌います。マネーという言葉を口にするのも憚られ、仕草でマネーを表す人も少なくありません。何故なら、何よりもお金が嫉妬を引き起こすことをよくわかっているからなのでしょう。
一方、アイスランドも世界で最も幸せな国の一つとして知られています。「人生が満たされている」と感じている国民の数はなんと全体の4分の3にも上るそうです。
アイスランド人も嫉妬心への対処が上手なのですが、アイスランド人の場合は、嫉妬の対象となるものを（スイス人のように隠すのではなく）分かち合うのです。
アイスランドのような自然環境が厳しいところでは一人では活きていけません。助け合いの精神が自然と生まれるのです。その結果、分かち合うという文化が発達し、嫉妬心が不要になったようです。
３．繋がり・人間関係
愛や思いやりで人は繋がるのでしょう。
東日本大震災を契機として、「つながり」の大切さが再認識されました。
国民総幸福という指標で有名なブータン国の精神的指導者のカルマ・ウラは「幸福はひとりでは有り得ない、人と人との関係の中でしか幸福は有り得ません。」と言い切っています。
西洋諸国では一般に希望を高く持つことが、幸せの追求そのものだとさえ考えられていますが、ウラ氏は「私には登りつめるべき頂上はありません」と断言しています。
確かに、そういう穏やかな生き方であれば、他人を蹴落とすこともなく、人間関係がギスギスすることもないでしょう。
