最近、私が社長を務める広告代理店 ㈱ピース が池袋に引越しました。引越業者の選定をするに伴って引越業界を調べてみると、経営学的に非常に興味が沸いてきました。今回は、引越専業会社でナンバーワンの会社の経営戦略を紹介します。
１．君子豹変
その会社は1979年に設立され、その名を「アーイ引越センター」としました。社長のアイデアで職業別電話帳で一番頭にくるように命名したそうです。
実は、ウィキペディアによると、0123で有名なアート引越センターが「引越事業を始めるに当たって社名を決める際、多くの人は運送業者を探す時に電話帳を使うため、できるだけ最初の方で見つけやすい位置に乗る社名にと考えた」そうです。これが1977年のことです。
これが正しいなら、別に法律違反ではありませんが、完璧なパクリですよね。流石、関西人、「逞しい」の一言です。
しかし、やはり気が引けたのか、2年後の81年には、商号を早々と変更しました。新商号は「堺引越センター」です。そして、90年には、カタカナ表記に改め、「サカイ引越センター」と名乗るようになりました。そうです、引越専業会社でナンバーワンの会社とは、パンダのマークで御馴染の「引越しのサカイ」のことなのです。
２．無駄を省く
「サカイ引越センター」の創業者は、当初、企業向けの運送業を営んでいました。当時は、高度成長期であり、運送需要が増加していたので、受注に困ることはありませんでした。しかし、企業の場合、手形支払いが多いので、受注すればするほど資金繰りに苦しむ結果となりました。また、土日には殆ど仕事がなく、折角のトラックを遊ばせてしまうという悩みもありました。
そこで思いついたのが、個人相手の引越です。個人相手なら、土日の作業がメインです。しかも、個人相手なら、現金払いが常識です。正に一石二鳥です。これで、無駄なくトラックを活用でき、しかも、資金繰りも楽になりました。
３．品質への拘り：直営展開/顧客満足
同業他社が苦戦している中で、サカイだけが好調なのは、品質にこだわっているからです。しかし、それは精神論ではなく、キチンと「仕組み」に落とし込んでいます。
事業展開の速度を考えれば、フランチャイズ展開が有利です。実際、同業他社ではフランチャイズ展開して地元業者を使っている会社も少なくありません。しかし、サカイは高い品質のサービスを提供することを重視して、直営にこだわっています。
また、顧客満足活動も徹底しています。
アンケート葉書だけでなく、引越の3日後には、「引越はお気に召しましたか」「物損はありませんか」等の電話を入れるようになっているそうです。
万一、引越作業時に不手際があったとしても、この電話により、顧客の不満は解消されることでしょう。
それより何より、このような電話を入れることになっていると引越従事者に周知されれば、自然と丁寧な仕事に心掛けるようになるでしょう。
更に、2005年には、トラックの位置やスピードが一目でわかるセーフティレコーダーを約2,400台の全車両に搭載したそうです。1台20万円も高価なものですが、顧客満足の為に導入を決断したそうです。
４．あくなき努力：買収/業務提携
競争の激しい業界にあって、安くて品質の高いサービスを維持することは不可欠です。そのために、サカイは様々なアイデアを実行し、工夫を凝らしてきています。
サカイでは、段ボール製作会社を買収して梱包資材の調達コスト削減を図っています。
また、電気工事会社の買収によりエアコンの設置などの電気工事を内製化して、外注費の抑制に努めています。
一方で、同業他社に先駆けて、ウェブサイトを開設・充実させることにより、営業コストを抑えつつ、市場拡大に努めています。その結果、現在、インターネットによる受注が約24％にも達しているそうです。また、不要になった処分ゴミを再生して売るリサイクルショップを始めて、収益改善にも努めています。
更に、2008年には、ダスキンと業務提携して、ダスキン製品の1か月無料レンタルサービスを提供することで顧客満足度の向上を図っています。
このような努力の結果、サカイの支社146店は新店以外赤字ゼロを達成しているそうです。
