今回は、ドリフターズのCMで有名なケーズデンキの経営方針について紹介します。このケーズデンキ、実は隠れた超優良企業なのです。このケーズデンキが身を置く家電量販業界は15年間に首位が何度も入れ替わる浮沈の激しい業界ですが、ケーズデンキは、創業以来安定的に成長を続け、常に首位グループに位置しているのです。
1. がんばらない経営
家電戦争で有名な「北関東のYKK」の一角、ケーズデンキを展開するケーズホールディングスの加藤修一会長は、「水戸の家康」の異名をとっています。この加藤氏が目指すのが「がんばらない経営」です。
このケーズHDは、競争が激しい家電業界の中で、創業以来の62年連続で増収、しかも減益は2年だけという超優良企業です。
この好業績の秘訣は「がんばらない」ことだそうです。
確かに、ケーズHDでは、定時退社や週休2日が守られているそうです。しかも、数値目標・ノルマもありません。
こういうと、社員はダラダラしてそうですが、必ずしもそうではありません。
加藤氏によると「がんばらない」経営とは、無理をしない経営ということだそうです。できもしない目標に向かって無駄な努力をするのではなく、基本的なことを確実に実行していく堅実な経営のことです。売上を増やそう、利益を増やそうと無理な目標を立ててしまうと、それを達成するためにお客様に高い値段の商品や利益の取れる商品を無理に売りつけるようなことになってしまいます。短期的に見れば売上・利益が増えるかもしれませんが、望んでいない商品を買わされたと感じたお客様はその後来店しなくなり、会社の成長は望めなくなります。
つまり、「頑張らない経営」とは「無理をしない経営」だということのようです。
このことを加藤氏は別の表現として「経営とは言ってみれば"終わりのない駅伝競走"のようなものだ」と断言しています。
2. 「運」-人間万事塞翁が馬
「頑張らない人」というと「諦めた人」のようで欧米では負け犬のように否定的に捉えられています。
しかし、我が国など仏教国においては、むしろ諦めることを大いに推奨しています。
似たような例に「お任せ」という概念があります。これも欧米では無責任な態度と捉えられ否定的な言葉です。
しかし、浄土宗・浄土真宗などにおいては「お任せ」の境地に至ることを非常に重要視しています。
俗っぽい言い方をすれば「人事を尽くして天命を待つ」という境地でしょか。
恐らく加藤修一氏が「頑張らない経営」を目指したのは、厳父の馨氏の影響もあったのではないでしょうか。
実は、加藤馨氏は何度も「諦め」を経験しています。
子供の頃には父親が急死し暮らし向きが悪化したことから進学を諦めざる得なくなりました。
その後、軍人になりましたが、終戦により、軍人としても出世も諦めざるを得ませんでした。
戦後、就職先を探しましたが、元軍人には職業を斡旋しないようにという米軍からの命令があり、就職を諦めざるを得ませんでした。自分で商売を始めるしかありませんでした。こうして始めた「ラジオ屋」が後にケーズHDに発展したのです。
長い人生の中には、自分の思い通りにいかないことが多いものです。しかし、無理に自分の思いを通すことなく、神様が自分に悪いことをするはずはないので何か理由があるはずだと信じて、与えられた新しい境地で真面目に努力することで運命が開かれていくことを、加藤家の経営は証明しているのでしょう。
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